滑走路(萩原慎一郎著)角川書店

よう、大谷VSトラウトを見たか❓張飛だ❗

今日は最初に、3月16日(木)の産経新聞の産経歌壇(小島ゆかり選)に俺の短歌が掲載されたから、紹介させてくれ。これだ❗

石井啄也というのが俺のペンネームだ。この短歌は、俺が以前交通事故にあって入院していた時の実体験に基づいた短歌だ。俺より先に入院していた人がLINEグループに誘ってくれて、グループに入ったんだが「210号」という病室名がLINEグループの名前になっていたんだ。

それがとても俺にとってはインパクトがあったから短歌にしてみた。ちなみに、「四人」はフィクションで実際は三人だった。三人だと二句目が、八音になって字余りになる上に、読んでみるとリズムがとても悪くなるから「四人」としてみた。

俺は短歌を作り始めた時は、短歌は全部事実と全く同じことを書いていると思っていたんだが、穂村弘の『ぼくの短歌ノート』に俵万智の有名なサラダ記念日の短歌についてこんな事を書いていて衝撃を受けた。

実際の体験としては「サラダ」ではなくて「カレー味のからあげ」だったとのこと。

「ぼくの短歌ノート」穂村弘著(講談社文庫)

これを読んで創作するのもありなんだ、と知った。

捕捉すると、日付や地名、人名などをあえて字余りにすることによって「あえて字余りにしているということは事実を詠んだ短歌に違いない」と読者に錯覚させるテクニックもあるそうだ。

しかし、今はあれこれ難しく考えずに、なるべく基本に忠実になるべく定型に収める事を目指して短歌を作っていきたい。

ちなみに、月刊うたらば3月号「土」は、5首送ったが残念ながら不掲載だった。今思うと内容が似た短歌が多かったような気もする。その点を反省点として次回のお題「口」に5首投稿した。掲載されることを願いたい。

そして、話は変わるが先日現代歌人協会から今年の全国短歌大会の詳細が記載されたはがきが届いた。これだ。

作品応募要領は、昨年と同じだが選者は一新されていて、その顔触れを見て俺はかなりテンションが上がった。俺が投稿している日経歌壇、短歌くださいの選者の穂村弘、産経歌壇の選者の小島ゆかりがいて、更には「念力レストラン」を読んで好きになった笹公人(ささきみひと)も選者として名を連ねている。

昨年以上に楽しみな全国短歌大会になりそうだ。この大会では10人の選者がそれぞれ選者賞1首、秀作2首、佳作17首の計20首を選ぶ。そして、その中から全国短歌大会賞2首、朝日新聞社賞1首、学生短歌賞2首が選ばれる。(ちなみに、2012年には歌人木下龍也が全国短歌大会賞を受賞している)

10人がそれぞれ選んだ20首は全て選歌集に掲載される。

昨年の応募歌数は1917首だったから、佳作以上に選ばれるのは狭き門だし、3000円の参加料もかかる(送れる短歌は5首以内)が、10人の歌人に自分の短歌を見てもらう事ができる貴重な機会でもある。気になった奴は、チェックしてみてくれ。

じゃあ、今日もおすすめの本を紹介するぞ❗

萩原慎一郎の第一歌集

こんな奴におすすめ❗

意味が分かりやすくて、胸の熱くなる歌集を読みたい奴

概要

この本は、読書アプリ「ブクログ」の友達、5552がレビューしていて気になって読んだ。

著者は、32歳という若さで命を絶ってしまった歌人萩原慎一郎だ。本書は彼の第一歌集であると同時に、遺歌集ともなってしまった。この本に収められている短歌はどれも、真っ直ぐな言葉で詠まれている印象で、とても心に響いてくる。

長い間、非正規雇用で働いていたそうで、そんな環境のなかでの生きづらさを詠んだ短歌や、同じような悩みを抱える人たちへのエールともいえる短歌が多いと感じる。また、学生時代に受けたいじめによる精神的な不調にも長く苦しめられていたようだ。

そんな彼の生きる希望になっていたのが、短歌を作ったり詩歌の作品や哲学書を読むことだったそうである。新聞歌壇や、短歌の全国大会にも挑戦していたそうで華々しい受賞歴もある。

この歌集を読むと、彼の真っ直ぐで純粋な心が短歌にそのまま表れている。最初で最後の歌集になってしまった事が残念でならない。いくつか短歌を紹介したい。

挫折などしたくはないが挫折することはしばしば 東京をゆく

「滑走路」萩原慎一郎(角川書店)

なぜか、心をわしづかみにされた凄くかっこいい短歌だ。ポイントは「東京」だろうか。もし、ここが別の地名だったら短歌全体の印象が変わって台無しになってしまう気がする。

「東京」という言葉が持つイメージには、いろいろあるがこの短歌においては上の句で使われている「挫折」という言葉と、「東京」が響きあって読む人の胸に迫ってくる短歌になっている。

かならずや通りの多い通りにも渡れるときがやってくるのだ

「滑走路」萩原慎一郎(角川書店)

この短歌を読むと、アレクサンドル・デュマの名作「モンテ・クリスト伯」で主人公のエドモン・ダンテスが悲哀に沈む青年に贈った言葉を思い出す。これだ。

待て、しかして希望せよ!

「モンテ・クリスト伯」アレクサンドル・デュマ(岩波書店)

車の通りが多いからといって、渡るのを諦めてしまえば永遠に通りの向こうに行くことは出来ないが、希望を持って待ち続ければ渡れる瞬間はやってくる。焦って車の走っている最中に渡ろうとしても、車に跳ねられてしまう。

ただ、俺が思うにダンテスが言った「待て」というのは決して何もせずにただ待つということではなく、目標や夢に向かって努力し続ける、ということだろう。

そうでなければ、たとえ車が一瞬途絶えて、渡れる瞬間が来たとしても足腰が弱ってしまってそのチャンスを掴めないかもしれない。そんな事を思った。

占いの結果以上にぼくたちが信じるべきは自分自身だ

「滑走路」萩原慎一郎(角川書店)

とてもストレートな短歌で胸を打たれた。読者へのエールのようにも思えるし、著者が自分自身に言い聞かせているような気もする。たぶん、その両方だろう。

歌作とはこころの森に棲む鳥の声音に耳を澄ますことなり

「滑走路」萩原慎一郎(角川書店)

先日、NHKの「プロフェッショナル」に歌人の俵万智が出ていて、短歌を作る時に心が一番大切というような内容の事を言っていて、それが一番心に残った。(正確な内容は思い出せないが)

この短歌もおそらく同じ事を伝えようとしている気がする。音数合わせに気をとられすぎたり、かっこいい言葉を使おうとしてそっちにばかり意識が行ってしまうと、自分が最初に感じた気持ちが置き去りになってしまう気がする。

実際のところ、俺もそういう時がよくあるんだ。でも、そんな短歌は時間がたって読んでみるとあまり魅力が感じられない事が多い。

どんな時でも、最初に自分が感じた気持ちを大切にしつつ、言葉を選んでいきたい。それが「声音に耳を澄ます」ということなのかもしれない。

非正規の友よ、負けるな ぼくはただ書類の整理ばかりしている

「滑走路」萩原慎一郎(角川書店)

この短歌は単なる一方通行のエールではない点に惹かれる。「書類の整理ばかりしている」からは、「僕も苦しいが、共に頑張ろう」という気持ちが感じられてそこに感動する。

どちらかと言えば悲しみ 同じひと同じ感情存在しない

「滑走路」萩原慎一郎(角川書店)

確かに、悲しみといってもいろいろある。著者がこの短歌で伝えようとしているのは、人間がひとりひとり持っている微妙に違っている感情を「悲しみ」という言葉でひとくくりにする事の怖さではないだろうか。

似ているようでも、それぞれが世界の中でオンリーワンのかけがえのない存在なのだから、ひとりひとりの気持ちをわかったつもりにならずに謙虚にお互いが理解し合おうとする事の大切さを伝えようとしているように思えてならない。最後はこの短歌を紹介したい。

ぼくたちのこころは揺れる 揺れるのだ だから舵取り持続するのだ

「滑走路」萩原慎一郎(角川書店)

人間の「こころ」を海原をゆく船にたとえている。思えば、1日のなかでも人間の「こころ」は絶えず揺れ動いている。戦いで嫌な事があれば気持ちは落ち込んで疲れるが、帰ってきて好きな音楽を聴いたり、友人と食事したりすれば気持ちは和む。馬に乗っていて、奇襲を受ければむちゃくちゃ焦るが、切り抜ける事が出来れば安心する。

それ以外にも、小さな事で微妙に心は揺れ動いていると思う。だからこそ、「舵取り持続する」ことが大切だと、著者は言いたいのかもしれない。

そんな激動の海原のなかを進むときに、希望の方角へ、正しい方角へ導いてくれるのが良き友であり、良き本なのかもしれない。

まとめ

あとがきのなかで、俺が印象に残ったのは短歌に対する情熱と、周囲の人への感謝を忘れない謙虚な著者の心だ。数えてみたら、「感謝」という言葉があとがきのなかで7回も出てきた。彼の素直で真面目な人柄が偲ばれる。

第2歌集を読めないことが残念でならないが、この「滑走路」を時折読んで、彼自身のことや彼の短歌への情熱、また素直な気持ちを表現する姿勢を忘れないようにしたい。

最後に

先日、新聞歌壇への掲載の自分へのご褒美と、関羽の誕生日ということもあり、またまた、コメダ珈琲店に行ってきた。食べたのはこれだ❗

「カツパン」だ。揚げたてで、サクサクのビッグカツとキャベツが挟んであってとても美味しい。前回紹介したシロノワールも食べようと思ってたんだが、カツパンのボリュームが想像以上に凄かったのと、関羽が食べていたパンも半分もらってお腹がいっぱいになったので食べられなかった。シロノワールは次回への楽しみとしてとっておきたい。

じゃあな。

(次回は、4月9日(日)に更新予定)

4 件のコメント

  • 張飛さん、新聞掲載おめでとうございます!
    ふと、思ったのですが、張飛さんの新聞のペンネームは石川啄木からとられたのではないかと思いました。
    何かのレビューかコメントで石川啄木がお好きと拝読したような気がします。
    違っていたらごめんなさい。
    歌が、新聞に続々と掲載されて凄いですね!
    これからも、張飛さんのブログ楽しみにしています。

    • まこと、コメントありがとう!お祝いの言葉ありがとよ!

      その通り、石川啄木が好きでそれにちなんだペンネームなんだ。ペンネームを決める時にどういうペンネームがいいか悩んでたんだが、『一握の砂』を読んで石川啄木が好きになって、石井啄也っていう響きもかっこいいかなと思ったんだ。凄く気に入ってるぜ!

      新聞歌壇の掲載までの期間は、今回産経歌壇に掲載された短歌は1月28日に投函して3月16日に掲載されたから、約1カ月半で前回より少し早い。(前回は1月7日に投函して3月2日に掲載されたから、約2カ月)

      日経歌壇の場合は、メールを送ってから掲載までは1カ月が多いがごくまれに1カ月半の時がある。

      なので、この2つの新聞歌壇では1カ月から2カ月くらいが掲載期間の目安といえそうだ。

      他の新聞歌壇にも投稿したことがあって、実は読売歌壇の俵万智の欄にも投稿していたことがある。ただ22首投稿して残念ながら掲載されたことはなかったんだ。(他には毎日歌壇も加藤治郎の欄に投稿したことがあるが11首投稿して掲載なし。投稿数と掲載数に関しては、昨年の年末の来年の抱負を書いたブログにも載せている)

      だから読売歌壇がどれくらいの期間かはわからな
      いが日経歌壇と産経歌壇の掲載までの期間を見ると1カ月から2カ月の間かなと思う。はっきりしたことが言えなくて申し訳ねえ。

      まことの短歌が早く掲載されるよう応援してるぜ!

      • 張飛さん♪
        お返事ありがとうございます。
        やっぱり、石川啄木だったのですね。
        それから、新聞歌壇の件も詳しい情報ありがとうございます。
        まだ応募して、早いものでも、3週間しかたっていないので、まだ、期待してても、いいのですね!
        私も俵万智さんに送っています。
        まさか、ほとんど初めて詠んだ歌が掲載されるわけは、ないとは思うのですが。
        張飛さんの、これからの更なるご活躍にも、期待しています。

        • まこと、微力ながら役に立てたようで嬉しいぜ!新聞歌壇に関しては俺も、まだまだわからないことが多いから参考になるようなことは言えないと思うが、また気になることがあったら、気軽にコメントしてくれ!俺もまことの活躍を期待してるぜ!

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です