土佐日記(全) ビキナーズ・クラシックス 日本の古典(紀貫之著・西山秀人編)角川ソフィア文庫

よう、かつおのたたきは好きか❓張飛だ❗

最初に、5月27日(土)の日本経済新聞の日経歌壇(穂村弘選)に俺の短歌が掲載されたから紹介させてくれ。日経歌壇への掲載は約3カ月半ぶりとなる。これだ❗

石井啄也が俺のペンネームだ。この短歌は一言でいうと「赤信号で車が止まった」ということなんだが赤信号をよく見ると、小さくて赤い点が集まって一つの丸い信号になっているんだ。そんな気付きを短歌にしてみた。

そして、もう一つ嬉しいことがあった。読書アプリ「ブクログ」の友達の5552と、☆ベルガモット☆の短歌が雑誌 「ダ・ヴィンチ」 の人気コーナー 「短歌ください」 に掲載されたんだ❗しかも、二人並んで❗では紹介したい。まずは5552の短歌がこれだ❗

「光が痛い」という表現がとても斬新で、穂村弘もコメントで触れているように言葉の選択が大事だという事を感じた。何気ない日常の風景が言葉によってドラマ化されていて凄くかっこいい。

そして、☆ベルガモット☆の短歌がこれだ❗

描写がとても具体的で丁寧だから、自分もその場でルノアールの絵を見ているような臨場感がある。そしてそれは、穂村弘のコメントを読むと漠然とした怖さの理由に気づくことができる☆ベルガモット☆の感性の豊かさの現れなんだと感じた。

5552、☆ベルガモット☆、あらためておめでとう❗俺も二人と並んで掲載されるように「短歌ください」の投稿も頑張りたい❗

じゃあ、今日もおすすめの本を紹介するぞ❗

平安時代の大歌人紀貫之が書いた紀行文学の名作

こんな奴におすすめ❗

  • 和歌に興味がある奴
  • 古典文学に興味がある奴
  • 短歌を作っている奴

概要

著者は平安時代の大歌人、紀貫之だ。彼は『古今和歌集』の中心的撰者でもある。俺は紀貫之については以前は名前を知っている程度だったんだが、百人一首の彼の和歌を読んで一気に好きになった。この和歌だ。

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける

歌意 あなたは、さあどうだろう、人の気持ちは私にはわからない。昔なじみの土地では、梅の花だけが昔と同じ香りで匂うのだったよ。

『原色 小倉百人一首』鈴木日出男 山口慎一 依田泰 共著(文英堂)

移ろいやすい人の心と、春になれば必ず咲く梅の花を対照的に詠んだ和歌だ。梅の花のようにどんな時でも動かない自分を作りあげろ、という彼のメッセージが込められているような気がしてとてもこの和歌が好きになった。同時に紀貫之のことも好きになった。

そして、後で詳しく述べるが先日、高知県を訪れた時に偶然紀貫之が住んでいた場所があることを知って、そこを訪れて歌碑などを見てさらに彼のことが好きになった。

さらに、ゴールデンウィークにNHKのEテレで紀貫之の特集をしていて(「知恵泉」(ちえいず)という番組)、そのなかで『土佐日記』のことにも触れており、彼の和歌への情熱や人情味溢れる和歌に感動して、いても立ってもいられず『土佐日記』を買った。

とはいえ、読む前は古典というだけで難しくて取っつきづらいようなイメージを持っていた。しかし実際に読んでみると想像以上に楽しんで読めた。この本の解説を書いている西山秀人は「はじめに」でこう述べている。

笑いあり、涙あり、スリルあり、そして作品全編にただよう水の匂い。それが『土佐日記』の魅力だといえましょう。

『ビキナーズ・クラシックス 日本の古典 土佐日記(全)』紀貫之著 西山秀人編 (角川ソフィア文庫)

完全に同感である。時折、デーブ・スペクターにも負けないような駄洒落などのユーモアをまじえながら、船旅での様々な人間模様を綴っていて読み出すと止まらなくなる。古典を今まであまり読んだことがなかった俺でも楽しく読めた。

構成としては、この本においては全体を39章に分けており、1つ1つの章は原文、現代語訳、解説の順になっている。また、ところどころにコラムが書かれている。

現代語訳が分かりやすい上に、解説がとても丁寧、かつ堅苦しくない最高の文章なのでスムーズに読み進めることができる。

『土佐日記』は、934年に土佐守(とさのかみ)の任期を終えた貫之が、京の自宅に帰るまでの五十五日間!の旅を綴った日記文学だ。出発する時は土佐の人たちが温かな見送りをしてくれたものの、天候の影響で船がなかなか進まなかったり、海賊に狙われる。また、自己中心的で癖のある楫取(かじとり)にイライラさせられたり、鬱々としながらも折に触れて歌を詠み合いながら、ひたすら京を目指す一行の姿が描かれている。

『土佐日記』の書き出しは次の一文だ。

男(をとこ)もすなる日記(にき)といふものを、女(をむな)もしてみむとてするなり。

男の人が書くと聞いている日記というものを、女の私も試みに書いてみようと思って書くのです。

『ビキナーズ・クラシックス 日本の古典 土佐日記(全)』紀貫之著 西山秀人編 (角川ソフィア文庫)

不思議なことに、紀貫之はこの本を貫之自身の個人の記録ではなくあくまでも前土佐守に仕える女房の日記という体裁をとって、書いているのだ。この謎の理由について解説に分かりやすく書かれてあったので少し長いが引用したい。

この時代、日記といえば男性官人による公務の記録であり、漢文で書かれるのがふつうであった。ところが、『土佐日記』は全編ひらがなで書かれている。ひらがなは女手とも言われるように、最初は婦女子によって用いられたもので、会話や和歌を描写するには最適である。おそらく貫之のねらいは、日記という形を借りて、ひらがなによる新しい文学を創始することにあったのだろう。官僚としての自分を解放し、自由な立場で文学を書いてみたい。そこで考えついたのが「女装」、今風にいえばコスプレに相当する手法であった。貫之はこともあろうに前土佐守に仕える侍女の一人になりすまし、帰京する一行の中に潜り込んだのである。

『ビキナーズ・クラシックス 日本の古典 土佐日記(全)』紀貫之著 西山秀人編(角川ソフィア文庫)

コスプレという例えがとても面白い。ひらがなで日記を書くという事自体が当時としては、とても画期的なことだったのだ。

そして、『土佐日記』は旅を綴った日記でありながら、和歌入門書としての側面も持っている。(この事は、「知恵泉」で触れられていた)『土佐日記』には五十八首(引用歌二首を含む)もの和歌が出てくるんだ。子供が詠んだ和歌もある。(実際に作ったのは著者の紀貫之だと思うが)

俺が高知で見た歌碑に刻まれていた2つの和歌を紹介したい。どちらも俺は好きだ。

都へと 思ふをものの 悲しきは 帰らぬ人の あればなりけり

(いよいよ都へ帰るのだと思うと、うれしいはずなのに、何とも悲しいのは、生きては帰らぬ人があるからだったよ)

『ビキナーズ・クラシックス 日本の古典 土佐日記(全)』紀貫之著 西山秀人編(角川ソフィア文庫)

紀貫之は土佐へ赴任する時に、幼い娘を一緒に連れて来ていたそうだ。しかし、残念ながら娘は土佐の地で病気になって死んでしまう。そのことを悲しむ歌だ。もう一つはこの歌。

棹させど 底ひも知らぬ わたつみの 深き心を 君に見るかな

(棹をさして知ろうとしても測り知れない大海のように、深いご厚意をあなた方には感じますよ)

『ビキナーズ・クラシックス 日本の古典 土佐日記(全)』紀貫之著 西山秀人編(角川ソフィア文庫)

前土佐守が土佐を出発するときに見送りに来た人たちはなんと、声を一つにして惜別の歌を詠み上げる。この歌はそれに対する、前土佐守の返歌である。『土佐日記』の全編を通して俺が最も胸が熱くなった場面である。

土佐の人たちと、前土佐守の絆が素晴らしい。俺が劉備兄貴や関羽と義兄弟の契りを結んだ三国志の「桃園の誓い」に勝るとも劣らぬ名場面だ。

また、この本のコラムで「古今的歌風とは」というタイトルのコラムが印象に残ったので少し紹介したい。

貫之をはじめ『古今和歌集』時代の歌人たちは、目に見え心に思うことをありのまま歌に詠むのではなく、詠むべき対象を他のものにたとえたり、ことばの多面性に注目したりすることで、幻想的な世界を描き出すことに力点を置いていた。

『ビキナーズ・クラシックス 日本の古典 土佐日記(全)』紀貫之著 西山秀人編(角川ソフィア文庫)

例えば「見立て」の修辞技法もそのためのツールの一つとなっている。時代の違いや、文語と口語の違いはあるが自分の作る短歌にもいかしたい。

まとめ

一番感じたことは、古典といってもただ言葉が難しく感じられたり時代背景が違うだけで、書かれている内容(特に人間の心)は今の時代にも通じることが多いということだ。これからも、土佐日記のみならず百人一首や古今和歌集といった古典にも触れるようにしていきたい。

最後に

前回のブログでも書いたが、俺は4月に高知県に馬で遠乗り(車でドライブ)をしてきた。当初の目的は手結港可動橋(ていこうかどうきょう)という、動く橋を見ることだったんだが(橋の写真は前回のブログに掲載している)、その帰り道に気になる標識を発見した。紀貫之邸跡(きのつらゆきていあと)という標識である。どうやら近くにあるらしい。

行くことに決めたが、腹が減っていたからまずは、道の駅に立ち寄り飯を食うことにした。高知県に来て飯を食うといえば、もちろんこれだ❗

かつおのたたき定食だ。かつおのたたきは炙ったばかりなのだろう、温かくて柔らかく最高においしかった。外に出ると、つばめを発見。

普段あまり近くで見る機会がないが、首の下が綺麗な赤色になっている。そして、紀貫之邸跡へ向かう。着いて最初に驚いたのが、これだ❗

紀貫之邸跡へ向かう小道の道端に、短歌、俳句の投稿箱があった。投稿用紙も入っている。

ぜひ、短歌を投稿したいと思って、投稿用紙を取ろうとしたが残念ながら俳句用の用紙はあったが、短歌用の用紙は入ってなかった。たまたま、紙がなくなっていたのかもしれない。また改めての機会にぜひ投稿したい。

紀貫之邸跡の入り口だ。建物自体は残っていないが、ここで彼が過ごしていたと思うと感慨深いものがある。彼方に見えている小高い山などを貫之も眺めていたのだろうか。

紀貫之邸跡の説明が書かれていた。

さっき紹介した『土佐日記』に出てくる2首の和歌が刻まれた歌碑だ。土佐の地で亡くなってしまった娘への慕情と、離ればなれになってしまう土佐の人たちへの感謝の気持ちが胸にしみる。きっと貫之は、義理人情に厚い関羽のような男だったのだろう。

貫之の筆跡とされている「月」の字を拡大して刻印した石碑だ。

紀貫之邸跡に隣接する形で、「古今集の庭」 という庭園もある。

古今集の庭の説明が書かれている。庭園の中には、古今集で詠まれている草木が植えられている。写真は撮ってなかったが、この説明書きの右側には地元の生徒の俳句の優秀作品が紹介されていた。(知恵泉でも少し紹介されていた)

庭園の入り口付近。

庭園はそれほど広くはないが、とても静かで気持ちの安らぐ時間を過ごせる。

面白いことに、古今集で詠まれた草木を植えているところに、写真みたいにその草木を詠んだ和歌が紹介されている。

よみ人知らずの和歌も多い。

紀貫之邸跡、古今集の庭を訪れてとても癒されて、贅沢な時間を過ごすことが出来た。たまたま、紀貫之邸跡の標識をみたのは、紀貫之が俺を招いてくれたのかなあ、そんなことをふと思いながら帰路についた。

じゃあな。

(次回は、6月25日(日)に更新予定)

4 件のコメント

  • 張飛さん、おはようございます。
    まずは日経歌壇の短歌の掲載、おめでとうございます!
    今回もまた新鮮な驚きをもたらしてくれる歌ですね。
    大きくて力の強い「車」というものに、小さくて無力な「赤い点」たちが、力を合わせ対峙しているようで、健気さを感じました。「赤い点」たちに自分を重ね合わせ、朝から元気をもらいました。ありがとうございます。
    私の短歌を紹介してくださりありがとうございます。嬉しいです。
    かつおのたたきは私も好物です。
    でも、スーパーの半額セールの時しか買ったことないのでまだ自分はその真価を知らないのだろう、と思ってます。笑
    紀貫之邸跡の詳細な旅レポート、楽しみました。
    つばめもお出迎えしてくれたようですね。かわいいです。
    短歌投稿の紙が無かったのは残念ですね。
    また来いって、貫之が言ってくれたのかもですね。笑

    • 5552、おはよう!ブログを読んでくれた上にコメントもくれてありがとう!

      短歌を作る力はまだまだ不足してるが、なんとか読む人が元気になれたり、クスッと笑えたりする短歌を作りたいと思っているから、朝から元気になれたと知って凄く嬉しいし励みになったよ!こちらこそ、ありがとう!

      かつおのたたきは、とても美味しかったからもし高知に行く機会があればぜひ食べてみてくれ!

      旅レポートも楽しんでもらえたようで良かった!また来いと貫之が言ってくれたのかもか、なるほど笑!ぜひ今度行った時はあのポストに短歌を投稿してみたい!選者は紀貫之かもな!

  • 張飛さん、おはようございます♪

    日経歌壇、掲載おめでとうございます。
    今回の歌は、私にはちょっと難しかったです。
    穂村弘さんの歌も、難しいと感じることのある、私の理解力なので、気になさらないで、ください。

    紀貫之邸跡への旅、よかったです。
    特にかつおのたたきの定食が、美味しそう。
    一緒に私も旅をしている、ような気持ちにさせられました。
    短歌投稿の紙が、なかったのは、残念でしたね。
    5552さんが、おっしゃっているように、また来るように、紀貫之が言っていたのかもしれませんね。

    • まこと、おはよう!ブログを読んでくれた上にコメントもくれてありがとう!

      俺の短歌の率直な感想もありがとう!短歌を作るときに、俺の場合自分だけがわかったつもりになっている短歌になってしまっているような気がする時がよくあるんだ。歌会などには全く参加していなくて、人の意見を聞く機会がほとんどないからたまに遊びにくる関羽や劉備兄貴にとりあえず意味がわかるかを聞く程度で。

      だから、今後も遠慮なく率直な感想を聞かせてくれると嬉しい!読む人にちゃんと伝わって、しかも想像して楽しめる余地のある短歌を模索していきたいと思ってる!

      一緒に旅をしているような気持ちになってもらえて良かった!まことも、高知に行く機会があればかつおのたたきを食べてみてくれ!俺自身今度行く時は紀貫之に送るようなつもりで短歌を書きたいと思う!

      また戦い(仕事)が落ちついたら、徳島か愛媛あたりに馬(車)でひとっ走り行ってきてみんなに楽しんでもらえるような旅日記を書きたい!

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