えーえんとくちから(笹井宏之著)筑摩書房

よう、ゴールデンウィークも短歌を作っている張飛だ❗

最初に俺の作った短歌が4月4日(木)の産経新聞の産経歌壇 (小島ゆかり選)と、『NHK短歌2024年5月号』に掲載されたから紹介したい。ペンネームは石井啄也だ。

まずは、産経歌壇に掲載された短歌がこれだ❗

神戸からアメリカへ行きフィリピンで働く地球人の友だち

4月4日(木)の産経新聞の産経歌壇

俺の友人に神戸出身の友人がいて、その友人はアメリカの大学に行って卒業後フィリピンで働いている。そして外国の人と結婚している。たまに、日本に帰ってくることがあって、この前会って話したんだが今は日本語より英語で話すほうが楽らしい。

もはや、日本人という感じじゃなくて「地球人」みたいに感じて短歌にした。四句から結句にかけては、句またがり(一続きの言葉が句の切れ目を越えて用いられること)になっているが、国境を越えて活躍している友人の姿にあうかなと思ってそのままにした。

次は『NHK短歌2024年5月号』に掲載された短歌だ。なんと、2首も佳作として掲載された❗まずは、「ひとり」のお題(川野里子選)で掲載された短歌がこれだ❗

「神を見たことのある人いますか」の問いにひとりの人が挙手する

『NHK短歌2024年5月号』NHK出版

これは、友人があるセミナーに参加した時に講師の人の質問にひとりの人が手を挙げた、という実話である。挙手したのはジョークかどうかわからないが、その場が不思議な雰囲気に包まれたらしい。想像すると面白くて、短歌にした。

そして、「続き」のお題(岡野大嗣選)で掲載された短歌がこれだ❗

「旨いよな」と言って黙った友人が十秒たって「プリンは」と言う

『NHK短歌2024年5月号』NHK出版

これも実話である。なぜ、十秒間をあけたか謎だが面白かったので短歌にした。「プリン」のところは本当はマシュマロとか四文字の食べ物だったと思うが、結句の音数を七にするために「プリン」とした。

選んでくれた選者に心から感謝したい。

そして、さらに嬉しいことに読書アプリ「ブクログ」の友達の5552の短歌が4月6日(土)のNHKラジオ「文芸選評」テーマ「猫」(穂村弘選)で紹介されて、☆ベルガモット☆の短歌が 『NHK短歌2024年5月号』 でなんと三首も紹介された❗

まずは、5552の短歌がこれだ❗

地表から剥がれるように愛猫は蜘蛛をめがけて天に落ちゆく

2024年4月6日(土)のNHKラジオ「文芸選評」

5552のコメントによると、重力から一瞬自由になるかのような獲物狩りシーンを描いたそうで、「天に落ちゆく」という言葉がめちゃくちゃかっこよくて斬新だと感じた。

確かに、猫の瞬発力は犬とは比べものにならないくらい凄くて、何かが上から下に落ちてゆくぐらいの速さを感じる。猫の場合は「天に落ちゆく」は納得の表現だと思った。

また、5552のコメントによると「地表」は当初「地面」としていたが、「地表」に推敲したそうだ。「天」という言葉には「地表」がぴったりの組み合わせだと感じたし、一つ一つの言葉の選択が短歌においては大事だということを学ばせてもらった。

次に、☆ベルガモット☆の短歌を紹介したい。3首掲載という快挙である❗まずは『NHK短歌』の「短歌のはがき出そう運動」でテーマ「母」(桜井健司選)に掲載された短歌だ。なんと第一席である❗これだ❗

選者の評も掲載されていた。

石川啄木の短歌と並んで掲載されているなんて、啄木を尊敬している俺としてはとてもうらやましい❗☆ベルガモット☆のコメントによると、背が小さいのに☆ベルガモット☆にも着られるように着物は大きめに作ってくれていたそうである。

大きな形見の着物からお母様の大きな包容力のようなものも、感じることが出来てとても胸にしみたし、短歌においては詠む対象への思いの深さが大切なんだということを強く感じた。

2首めはこの短歌だ❗お題は「ひとり」(川野里子選)。

カップルの後ろにラーメン待つ我れの握りこぶしに力が入る

『NHK短歌2024年5月号』NHK出版

とてもユーモアが感じられて凄く好きな短歌である。今月の『NHK短歌』の「誌上添削教室」で歌人の田村元(たむらはじめ)が、こんなことを書いていた。

短歌の読者は、「作者が伝えたいのはこういうことじゃないかな」と一首を読み解きたいものなのです。短歌を作るときは、読者のために短歌を〈読み解く余地〉を残しておくことが大切です。

『NHK短歌2024年5月号』NHK出版

☆ベルガモット☆の短歌は事実を描写しただけで感情を表す言葉はないが、「握りこぶしに力が入る」から苛立ちのようなものを想像することができた。☆ベルガモット☆の短歌を読んで、読者が想像して楽しめる余地を残すことが大事だということを改めて学ばせてもらった。

3首めはこれだ❗テーマは「組織」(吉川宏志選)。

「陰性」を検査キットで確かめて職場へ向かう週の初めに

『NHK短歌』NHK出版

☆ベルガモット☆のコメントによると、疫禍での感染対策、組織の方針に振り回された大変さの一面を忘れないように詠んだそうである。

俺の働いているところも、流行り始めた頃は感染対策に凄く取り組んでいたからこの短歌にとても共感できた。社会全体の重苦しい雰囲気がとても鮮烈に伝わってくる短歌だと感じた。

あらためて、5552、☆ベルガモット☆、おめでとう❗

じゃあ、今日もおすすめの本を紹介するぞ❗

二十六年の生涯を駆け抜けた夭逝の歌人のベスト歌集の文庫版

こんな奴におすすめ❗

想像に富んだ詩心ゆたかな短歌を読みたい奴

概要

この歌集は、ブクログの友達のまことが教えてくれて読んだ。 笹井宏之という二十六歳で病気のため惜しまれながら亡くなった歌人のベスト歌集が文庫化された本である。未発表のエッセイや詩、俳句も掲載されている。現在は、笹井宏之賞という短歌新人賞も創設されている。

読んでみると、凄くいい短歌ばかりで歌集は付箋だらけとなった。そういえば、歌人の木下龍也も笹井宏之の『ひとさらい』という歌集をおすすめの歌集として、紹介していたのを思い出した。

特に印象に残った短歌をいくつか紹介したい。

「スライスチーズ、スライスチーズになる前の話をぼくにきかせておくれ」

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

牛が生まれて、成長して牛乳ができて・・・、そんなスライスチーズの過去に思いを馳せる。

つぼみより(きみがふたたびくるときは、七分咲きにはなっていたいな)

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

花のつぼみを見る繊細で優しいまなざしを感じることができる。

廃品になってはじめて本当の空を映せるのだね、テレビは

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

著者の作品を読んでいて思うのは、生命のあるものにだけではなくテレビのような無機物に対しても優しいまなざしを持って見つめている気がするということである。

ひろゆき、と平仮名めきて呼ぶときの祖母の瞳のいつくしき黒

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

「平仮名めきて」というのが、素晴らしい表現でゆっくり優しく呼んだのではないかと感じる。「ひろゆき」「平仮名めき」「呼ぶとき」「いつくしき」と「き」の連鎖がとても口ずさむと心地よい。

ひきがねをひけば小さな花束が飛びだすような明日をください

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

独特な比喩に魅かれた。重い病気を抱えていた著者の、心情が表れているような気がする。

夏らしきものがたんすのひきだしの上から二段目で死んでいる

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

「夏らしきもの」ってなんだろうか。いろんな想像が広がる。

影だって踏まれたからには痛かろう しかし黙っている影として

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

コンビニなどの接客をするお店で、たちの悪いお客からクレームをうけている店員さんを連想した。

スプーンに関心のある親指とない小指とのしずかな会話

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

そういえば、スプーンを持つときに小指がスプーンにつくことはない。

「とてつもないけしごむかすの洪水が来るぞ 愛が消されたらしい」

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

もしかすると、この歌集で一番好きかもしれない短歌。一句めの「とてつもない」の字余りは大量のけしごむかすを表しているのかもしれないし、四句めの「来るぞ 愛が」の字足らずは消された愛の表現かもしれねえ。あくまで推測だけど。

「愛」の大きさを、こんなふうに表現できるとは天才だと思った。

風という名前をつけてあげました それから彼を見ないのですが

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

「風」が著者の短歌には良く出てくる気がした。病気で寝たきりの生活をしていたという著者の、自由への憧れなのだろうか。

生きてゆく 返しきれないたくさんの恩をかばんにつめて きちんと

『えーえんとくちから』笹井宏之著(筑摩書房)

結句の「きちんと」というところに著者の誠実さが現れているような気がしてならない。

まとめ

著者の短歌から、いろんな触発を受けることができて最近は「風」という言葉が入っている短歌も何首か作ることが出来た。とてもオリジナリティに溢れた短歌ばかりで、オンリーワンの存在の歌集だと思う。

これからも、何度も読んでいきたい。

最後に

先日、関羽、趙雲と一緒に小豆島へ遊びに行った。

高松からこのフェリーで約1時間かけて小豆島へいく。

小豆島の土庄(とのしょう)港につくと、そこから二十四の瞳映画村へこのバスでさらに1時間かけていく。

二十四の瞳映画村の入り口。

1987年の田中裕子主演の二十四の瞳の撮影用セット。

外には綺麗な浜辺と海が広がる。

そして、ここが俺が一番来たかった場所。1954年に撮影された高峰秀子主演の二十四の瞳の映画ロケ地、岬の分教場である。ここは、以前実際に学校として使われていた。二十四の瞳映画村から、約700メートルほど離れたところにある。

70年前に実際にここで二十四の瞳が撮影された。映画を見て感動していた俺は、ここに来るのがとても楽しみだった。大石先生が、12人の生徒一人一人の名前をよんでニックネームを覚えているシーンを思い浮かべた。

教壇から見た教室。

レトロな雰囲気の廊下。建物のなかは、ゆったりした時間が流れている。

ちなみに、小豆島はオリーブの名産地でいたるところに写真のようなオリーブの木があった。知らなかったのだが、見るとオリーブの実は黒かった。あと、そうめんも有名でとても美味しい。

小豆島は他にも、魅力的な場所がたくさんあるのだが広くて1日ではとてもまわれないのでまた、別の機会にぜひ来たいと思う。

じゃあな。

(次回は、5月26日(日)に更新予定)

4 件のコメント

  • 張飛さん、おはようございます♪
    産経歌壇、掲載おめでとうございます!
    地球人という言葉がとても印象的な国際的な歌ですね。
    友だちを歌にしてもいいのですね。
    私にも9年間ブラジルのサンパウロに行っていて、この3月に帰国した友だちがいます。
    彼女は絵本作家として活躍しているしなんか、歌のネタにさせてもらえそうな気がしてきました。

    『NHK短歌』も、5552さん、ベルガモットさんとお三方ですごい御活躍ですね。
    新しい選者の先生はどんな歌をとられるのかとても楽しみです。

    笹井宏之さんの『えーえんとくちから』のご紹介もありがとうございます。
    1首1首コメント付きでとても丁寧なご紹介ですね。
    木下龍也さんも、お好きな歌人だったのですね。
    まあ、笹井さんを嫌いだという方はいないような気がしますが。

    小豆島にも行かれたのですね。
    二十四の瞳は70年前に作られたのですか?
    田中裕子さんが出ていらしたのとは違う作品ですよね??
    いつも、お仲間とお出かけされている張飛さん。
    羨ましいです。
    私は、コロナ禍になってからどこにも行かなくなり、近所を散歩しています(笑)。

    ゴールデンウイークは短歌作りですか。
    私もできればそうしたいけれど、最近、疲れてる(笑)。

    • まこと、ブログを読んでくれた上にコメントもくれてありがとう!

      地球人という言葉は、自分でも好きでぜひ短歌にしたいと思ったから印象的と言ってくれてとても嬉しいぜ!まことも、ブラジルに友人がいるんだな!きっと、俺の友人と同じく海外でしか感じられないこととかもいろいろあると思うし、その友人から聞いた話とかも短歌にすると面白い短歌になるかもしれねえな!俺も一度は海外に行ってみたいと思ってる!

      『NHK短歌』は、次から新しい選者ということで俺も楽しみだ!特に枡野浩一はどんな短歌をとるのか全く予測できねえ(笑)好きな歌人だからぜひとってもらいたいと思ってる!ブク友ほむほむ短歌会のみんなのおかげでNHK短歌へ投稿する張り合いも出てきたし心から感謝したい。

      えーえんとくちからをすすめてくれて、本当にありがとう!この歌集を読むと自然と触発を受けて、こんな短歌を作ってみたいと思えたし何度も読み返したい。この歌集に出会えて良かったよ!木下龍也の短歌には笹井宏之と作風が似ている短歌があるから結構影響を受けたんじゃないか、と勝手に思っている。

      二十四の瞳は、1954年に作られた映画(高峰秀子主演)と1987年に作られた映画(田中裕子主演)がある。1954年に作られた映画で使われた教室は、二十四の瞳の映画村から歩いて10分くらいのところにあるんだ。(ブログでは最後の方の写真)1987年に作られた映画で使われた教室は映画村の中にある。(ブログでは最初に紹介した教室)俺が見た映画は1954年に作られたモノクロの映画でとても感動したよ!また、ちょくちょく見たいと思う!

      俺は友人は多くないが、関羽とか趙雲とかがたまに遊びに誘ってくれるから感謝してる!俺は今まで散歩とかしてなかったが、最近は近所の池の周りを散歩したりジョギングして花の写真を撮って図鑑で後で調べたりしてる。とても気分転換になるから散歩やジョギングは続けたい。

      疲れてるということで、とても心配だがどうか疲れがたまってる時は体調第一で短歌作りとか無理せず休んでほしい。俺も疲れてる時は全然短歌とか思い浮かばないし、夜の8時くらいに寝てるときもある。まことの、健康を心から祈ってるぜ!

      • 張飛さん♪

        映画は、2回撮られていたのですね。
        私は、映画は観てなくて、子ども向けに書かれた原作のみ、読んだような記憶があります。

        健康の心配ありがとうございます。
        私なんて仕事も、してないのに、疲れたなんて言ったらバチがあたりますよね(笑)。

        • まこと、俺も前の仕事やめた時は、半年くらい仕事してなかったけど、でも不安とかで妙に疲れる時があった気がする。やっぱり疲れはストレスとか気持ちの部分も大きいと思うから、最近は散歩したり好きな音楽聴いたりして気分転換できるようにしてるよ。散歩とかジョギングは、ここだけの話健康診断で去年より腹周りが4センチ増えたってのが一番の理由だけど(笑)

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