オールアラウンドユー(木下龍也著)ナナロク社

よう、ワールドカップ見てるか❓張飛だ❗

今日は最初に、これからの季節にぴったりの旬なお菓子を紹介したい。これだ❗

「いちごのサンダー」だ。去年も発売されていたらしいんだが、その商品がリニューアルされて今月発売されたのがこの「いちごのサンダー」だ。

劉備兄貴のおっ母さんから、「これめっちゃ美味しいで。あんたも食べてみたらええわ」と勧められて買ってみた。(ちなみに劉備兄貴のおっ母さんは、かなりお菓子に詳しい)

上と下で二層になっている。

中はこんな感じだ。いちごの甘酸っぱさも感じられて、とても美味しい。ブラックサンダーよりも10円高い点だけは残念だが、時折買って食べたいと思う。

じゃあ、余談はこれくらいにして、今日もおすすめの本を紹介するぞ❗

木下龍也の第3歌集

こんな奴におすすめ❗

  • ワクワク出来る短歌を読みたい奴
  • 短歌をあまり読んだ事がなくて、何から読んだらいいかわからない奴
  • 口語で書かれた短歌を読みたい奴

概要

歌人・木下龍也第3歌集だ。著者は30代でまだ若く、今最も注目を集めている歌人と言っても過言ではない。

この歌集は、その制作過程をテレビ番組「情熱大陸」が密着した。

俺も見たが、著者からはより良い短歌を作っていこうとするストイックさと、人に対する優しさが感じられて、今まで以上に応援したくなった。

ブクログのみんなのレビューを読むと、カバーの色が5種類あるらしいが、俺が買いに行った本屋にあったのは薄緑の色のカバーだった。落ち着いた雰囲気でとても気にいっている。

装丁はブックデザイナーの名久井直子。彼女は、穂村弘の新装版の『シンジケート』や、雪舟えまの『たんぽるぽる』なども手掛けていて、素晴らしいブックデザイナーだ。

本書は、帯の写真にある一輪挿しの花のように1ページに一首ずつ短歌が掲載されている。

一首ずつだから、この歌集を読むと美術館に飾られた名画を一つずつゆっくり鑑賞しながら歩いているような、ゆったりした気分で読めたような気がした。

読んで思ったのは、やっぱり俺は木下龍也の短歌が好きだなぁ、と。読んでて、ワクワク出来るし何回も読みたくなるような味わい深さもある。

それと、彼の短歌はほとんどの短歌が、五七五七七の定型を守っていてリズムもいいから、これから口語で短歌を作っていこうとする人にとっての教科書としても最高だと感じる。

俺も何度も読み返して、文体を身に染み込ませていきたい。じゃあ、いくつかこの本で詠まれている短歌を紹介したい。最初はこの短歌だ。

波ひとつひとつがぼくのつま先ではるかな旅を終えて崩れる

「オールアラウンドユー」木下龍也著(ナナロク社)

風景としては、自分の立っている足元で波が消える、それだけの事だが、凄いと思ったのは「はるかな旅」という表現だ。

今、つま先で消えた波が起こったところまで思いをはせて、消えるまでを「はるかな旅」とドラマ化できる著者の想像力の凄さを感じた。

次は、この短歌。

雪だったころつけられた足跡を忘れられないひとひらの水

「オールアラウンドユー」木下龍也著(ナナロク社)

ひとひらの、っていう言葉の選択に著者のセンスが光っているような気がする。水にはあまりひとひらの、という言葉をつけない。

ただ、舞い降りてくる時の雪は、ひとひらの雪と表現できると思うからその時のことを忘れられない水は、雪が姿を変えた水ということで、“ひとひらの水”という表現になる。

俺だったら、一滴の水、みたいな表現をしてしまうと思う。ありきたりではない、新鮮な表現を使うことが大切だと感じた。それと、さっきの「波ひとつ~」の短歌同様、著者の想像力の豊かさを感じた。

他に、この短歌も印象に残った。

まわれ右してかなしみを背景にすれば拍手のなかの幕開け

「オールアラウンドユー」木下龍也著(ナナロク社)

俺はこの短歌を読んで人生は劇、という言葉を思いだした。

“かなしみを背景に”ということは、自分が劇を見る側ではなく、劇の登場人物として劇のなかで演じる、ということだと思う。

そして著者の感情は短歌のなかで読みとれないが、哲学的な事を表現している気がすると同時に、読者に送るエールのような気もする。

ポイントは「幕切れ」ではなく、“幕開け”になっている点だと思う。

悲劇と喜劇の違いは何かというと、途中がどうあれラストがバッドエンドかハッピーエンドなのかという点だ。バッドエンドであれば、悲劇。ハッピーエンドであれば喜劇。途中は一切関係ない。

たとえ、今“かなしみ”の中にあったとしても最後に勝てば人生は喜劇になる。そんなメッセージを感じた。

次はこの短歌だ。

春なんて根こそぎあげるその代わりずっと消えない夏をください

「オールアラウンドユー」木下龍也著(ナナロク社)

ここでいう「夏」っていうのは、自分にとっての幸せということかもしれねえ。夏は当然だが、春が過ぎたあとにやってくる。

春のような華やかさはなく、春より到来するのが遅くても、永遠に消えない夏が来れば自分はそれでいい。そう言っているような気がする。

また、この短歌も印象に残った。

人間へ まだ1割の力しか出してないけど? 消費税より

「オールアラウンドユー」木下龍也著(ナナロク社)

消費税から、人間への手紙という形が凄く斬新だ。今回の歌集ではこの短歌のようなユーモアをこめた短歌は少ない印象だが、相変わらずとても面白い。

最後に紹介したいのはこの短歌だ。

一輪のどうしても手に見える葉の二枚は残し西日に飾る

「オールアラウンドユー」木下龍也著(ナナロク社)

植物はずっと育てていると、人間みたいに思えてくる時がある。

俺も、ペチュニアという花を春から鉢植えで育てていて、花がたまたま隣どうしで並んで咲いていると、恋人どうしか、夫婦みたいに思える時があるんだ。上の写真のように。(写真は8月に撮影。ペチュニアは主に春夏に咲く花で今は花は残ってない)

そんな時に、片方の花が枯れると、もう片方の花が寂しげな様子に見えたりする。だから、この短歌を詠んだ著者の気持ちが少し分かる気がする。

あとがきで、著者がさりげなく書いていた一輪を“看取る”っていう表現も、全然不自然な表現じゃないと感じた。

まとめ

第1歌集も面白かったが、この歌集も最高に面白くて、より歌人として凄みを増してきている気がした。

著者は『公募ガイド 秋号』の誌上教室でこんなことを言っている。

僕はいつも作品の向こうに読む人がいることを考えて、自分を過信せずに怖がりながら一語一語置いていくということをやっています。

「公募ガイド 秋号 2022/VOL429」株式会社公募ガイド社

そういう姿勢で一首一首に臨んでいるからこそ、読む人の心を掴んで、読めば読むほど味わいが出てくる短歌を詠めるのかもしれねえ。

そんな著者の姿勢を俺も見習って短歌を作っていきたい。そして、著者の次なる歌集にも期待したい。

最後に

喜劇王チャールズ・チャップリンの映画人生の集大成と言われる映画「ライムライト」。

その中で足が動かなくなって絶望するバレリーナを、チャップリンが扮する芸人が励ました言葉を最後に紹介したい。

宇宙にある力が地球を動かし木を育てる。君の中にある力と同じだ。その力を使う勇気と意志を持つんだ。

映画「ライムライト」チャールズ・チャップリン監督

じゃあな。

(次回は、12月11日(日)に更新予定)

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