ブク友ほむほむ短歌会会報No.3
今月もみんなの短歌を紹介していきたい。
俺の短歌
最初に、11月4日(月)のNHKラジオ第一の、穂村弘がパーソナリティーのラジオ番組「ほむほむのふむふむ」 のリスナーの投稿短歌を紹介するコーナーで紹介された俺の短歌がこれだ❗ペンネームは、石井啄也 。
横を通る時にいつでもおばちゃんの笑顔が浮かぶ駄菓子屋跡地
NHKラジオ第一「ほむほむのふむふむ」
小学生の頃、よく行ってた駄菓子屋が最近行くと駐車場になっていた。そこを通るたびに、おばちゃんの笑顔を懐かしく思いだす。
ほむほむは、「おばちゃんの笑顔が浮かぶ」がいいと言ってくれていた。ちなみに、ほむほむは跡地を見ても何があったかなかなか思い出せないらしいが、古本屋がなくなったら絶対わかると話していた。
次に、第38回全国短歌フォーラムin塩尻で入選した短歌だ❗
ひとりだけパンツスーツでうつむいて歩く人あり 振袖のなか
全国短歌フォーラムin塩尻のホームページより
この短歌を作ったときは、あまり短歌が思い浮かばなかったときだった。そんなときに、以前『ダ・ヴィンチ』に載っていた文章を思いだした。
エッセイストの岸田奈美は、人生を振り返る連載をしていたときに5回で書くことがなくなったらしい。その時に、編集の人に相談したらこう言われたそうだ。
岸田さんの中には自分でも意味がわからないけれど、忘れられない記憶や光景があると思う。それを書いてみませんか?
『ダ・ヴィンチ』2023年6月号(株式会社KADOKAWA)
俺の中で忘れられない光景は何だろう、そう考えた時に思い出した光景があった。俺は二十歳の頃、東京の八王子に住んでいて成人式も八王子で参加した。
会場へ向かう時に、道の向かい側におなじく会場へ向かっている振袖姿の女性たちが歓談しながら歩いていた。そのなかに、一人だけ黒のパンツスーツを着た女性がうつむいて歩いていたのだ。
パンツスーツだったのは、経済的な事情だろうか。成人式のことは、記憶にほとんどないのにその光景は今でも心に刻まれている。その光景を短歌にした。
三人の選者のうちの一人の小島ゆかりが次のような評を書いてくれていた。
「パンツスーツでうつむいて歩く」人の姿が少し痛々しく眼に浮かぶ。個人の事情はわからなくても、一人孤独を抱えているような、その人を思いやる気持ちが伝わってくる。
全国短歌フォーラムin塩尻のホームページより
最後に、11月9日(土)の日経歌壇(穂村弘選)に掲載された短歌がこれだ❗
この街のジオラマを見た幼子が「ママこのなかに入ってもいい?」
11月9日(土)の日本経済新聞の日経歌壇
これは、図書館の入り口に置いてある街のジオラマを見た幼子の言葉だ。これが、そのジオラマ。
子供がこのなかに入って、ゴジラのように暴れている姿を想像すると面白い。
でもよく考えたら、幼子が入りたがっている「このなか」っていうのは今いる現実の世界の「ジオラマ」にすぎないんだけど。
選者に、心から感謝したい。
ここからは、掲載日の順にみんなの短歌を紹介したい。
☆ベルガモット☆の短歌
まずは、 『短歌研究 2024年11月号』 に佳作(島田修三選)として掲載された短歌2首だ。これだ❗
靴ひものリボン結びを習ひたる母の両手の熱さ偲べり
札束は元行員の母の手ですぢりもぢられ扇となれり
『短歌研究 2024年11月号』(短歌研究社)
どちらの短歌も情景がとても眼に浮かぶ短歌だなあ、と感じた。
1首めは、視覚だけではなく「母の両手の熱さ」っていう触覚にも働きかけるような短歌で、臨場感に溢れているところがいいなあ、と思った。
2首めの、「すぢりもぢられ」は初めて聞いた言葉だったが、くねらせるの文語だそうである。☆ベルガモット☆は、この言葉を知ってからどこかで使おうと思っていたそうだ。それで思いだしたが、小島ゆかりが歳時記や句集をよく読むということを書いていた。そこから短歌のイメージがわくことがあるらしい。
俺も☆ベルガモット☆のように知らない言葉についても勉強したいと思った。この短歌も親子の楽しげな様子が眼に浮かんで、温かな気持ちになった。
続いて、『NHK短歌 2024年12月号』 のテーマ「音」(俵万智選)に佳作として掲載された短歌だ。これだ❗
プランターにフリルレタスの新芽あり弾む音符のように連なる
『NHK短歌 2024年12月号』NHK出版
今まで、フリルレタスの新芽を見たことがなくてさっきネットで画像を見てみた。確かに、細い茎から小さい葉っぱが出てる姿は音符ににてる❗
新芽を見守る楽しい気持ちが伝わってくる短歌だなあ、と感じた。それと、濁点が「弾む」のず、だけなので全体的に柔らかな響きでそれが軽やかな音楽のイメージにもあっているような気がした。
あらためて、☆ベルガモット☆、おめでとう❗
5552の短歌
最初に、『NHK短歌 2024年12月号』 の「短歌写真部」に掲載された写真と短歌がこれだ❗
耳かきをしている瞬間を短歌にした、っていうところが凄くいいなと感じた。何気ない日常の光景なんだけど、5552にとって印象深い光景なんだな、ということが伝わってくる。「ゆらゆらと」から、「赤い帯」が揺れている情景も浮かんで鮮明に浮かんでくる。
写真も、瓢箪の鮮やかな緑と赤と、影のコントラストがいいなあ、と思った。カン・ハンナ部長から5552へのラブレターも書かれていた❗
かけがえのない幸せな風景ですね。私は韓国の実家に帰ると母の耳かきをしてあげるのが好きなのですが、耳かきをする母を眺める平和な時間もいいなと思いました。短歌も写真もとても素敵です。
『NHK短歌 2024年12月号』NHK出版
続いて、『NHK短歌 2024年12月号』のお題「触れる」(川野里子選)に佳作として掲載されていた短歌だ。これだ❗
風ふれる香りがふれる千里香ドア開けて秋白杖のひと
『NHK短歌 2024年12月号』NHK出版
千里香(せんりこう)とは、金木犀のことだそうだ。この短歌は、「白杖のひと」が最後にくる語順が凄くいいなと思った。穂村弘が、山形の文学講座で言っていた「短歌は語順が命」という言葉を思いだした。
第4句までで、嗅覚や触覚についてはふれられているのに視覚についてはふれられていない。その理由が結句で明かされることで、読者ははっとなる。その構成がとてもいいなあ、と感じた。「ふれる」のリフレイン(繰り返し)によってリズムもいい短歌になっている気がした。
5552、あらためておめでとう❗
まことの短歌
11月23日(土)の日経歌壇(穂村弘選)に掲載された短歌が、これだ❗
今度こそ中華料理屋に炒飯を食べに一人で入ってみよう
11月23日(土)の日本経済新聞の日経歌壇
今回掲載されたまことの短歌は、第4席で穂村弘の評も掲載されていた❗
「今度こそ」からの落差の面白さ。「中華料理屋に炒飯を食べに一人」で入るのが日課という人もいるだろう。
11月23日(土)の日本経済新聞の日経歌壇
この短歌は、穂村弘も書いてるように「今度こそ」という言葉を初句に置いたところが凄くいいなあ、と感じた。「今度こそ」という言葉を最初に目にした読者は続く文章として、試験に合格する、とかプレゼンを成功させる、とか人生の重要イベントみたいなものを想像すると思う。
だが、実際は「中華料理屋に炒飯を食べに一人」で入る、なのだ。その落差にたまらない魅力を感じる。短歌において、ひとつひとつの言葉の選択がいかに大切かということを強く感じた。
まこと、あらためておめでとう❗
ブクログで紹介した本
最後に
先日、香川県高松市の栗林公園に秋のライトアップを見に行ってきた。栗林公園は、香川県ではおそらく一番有名な公園である。
まだ、完全に紅葉になっていない木も多かったがとても綺麗だった。
紅葉が池にも映って幻想的な雰囲気に。
橋もライトアップされていた。風で水面が揺れる様子もきれいだった。鯉もたくさん泳いでいた。
特別企画として、和傘のライトアップも。
こちらも特別企画。風車のライトアップ。
少し肌寒い日だったが、とても楽しかった。外国の人も数多く訪れていて驚いた。鯉の泳ぐ様子を見るのも好きだから、暖かくなってもまた来たいと思う。
(次回は、12月29日(日)に更新予定)
張飛さん、おはようございます!
各媒体での掲載、おめでとうございます!
私の短歌の掲載もありがとうございます。
丁寧に鑑賞していただき嬉しいです。
今月もブク友ほむほむ短歌会、大活躍ですね。
☆ベルガモット☆さんのうたは、新芽の可愛さと弾むような歌の主人公の気持ちが伝わってきてウキウキしてきますね。
まことさんの歌はよくわかる派です。
ほむほむも(エッセイの感じでは)わかる派な感じです。笑
中華屋さんの、あのガヤガヤした感じが行間から漂ってきそうですね。
栗林公園のライトアップ、いろいろと工夫がされていますね。
楽しそうです。
今年もいよいよ終わりに近づいてきましたね。
いろいろと感染症も流行ってます。
お互いに身体に気をつけていきましょう!
5552、ブログを読んでくれたうえにお祝いのコメントもくれてありがとう!
今月もみんな大活躍で本当に嬉しいよ!
☆ベルガモット☆の歌は、俺もペチュニアを育ててたことがあったから、懐かしいような温かい気持ちになれたなあ。
まことの短歌も凄く面白かった!5552も、食事のお店とかに一人で入るのは苦手なタイプなんだな!ほむほむも(笑)俺は結構、休日は一人で讃岐うどんのお店とか行ってるなあ。一人で旅行にもよくいくしあまり、一人が苦にならないタイプかもしれねえ。でも、この前栗林公園に一人で行ってたときは確実に浮いてたような気がする(笑)
今年もあっというまに年末だな!温かい言葉をありがとう!5552も、ブクログのコメント読むと体調が優れないときもあるということで、体を大切にしてくれ!5552の健康を祈ってる!
張飛さん、おはようございます♪
「ほむほむのふむふむ」「全国短歌フォーラムin塩尻」「日経歌壇」掲載改めておめでとうございます。
「全国短歌フォーラム」の歌は私も、自分の成人式のことを思い出しました。
実は私は成人式は出ていないのです。父が転勤族で大学一年の時に青森市に引っ越したので、青森市から確か招待状が来たのですが
青森には同級生がいなく、私は東京の大学に通っていました。
振袖に対する憧れは全くなく母が「買って写真だけでも撮ったら」といいましたが私は「いらないよ」と言って代わりに当時流行っていたデザイナーズブランドの服を買ってもらいました。(張飛さんの短歌に関係ない話でごめんなさい)
私は成人式には出なかったから振袖はいらなかったけど、成人式に出る人はやっぱり振袖がないと肩身が狭くなるのだなあと思いました。
日経歌壇の歌は幼子が出てきますが、張飛さんの歌には幼子が結構たくさんでてきている気がします。
ご自分の周りの光景をよく観察されているのですね。
私は、たいして中身がないのに自分の気持ちばかりの歌が多いので、私も、少し周りの観察をしたらよい歌ができるかもと参考になりました。
ベルガモットさん、5552さんも相変わらずのご活躍ぶりで、毎回凄いと思っています。
私の短歌の掲載、コメントもありがとうございました。
日経歌壇掲載2度目で4席がいただけるとは思ってもいなくとても嬉しかったです。
あとで、取り消しにならないといいのですが。
まこと、ブログを読んでくれたうえにお祝いのコメントもくれてありがとう!
そうか、まことは成人式出てないんだな!確かに同級生がいないと参加する気が起きないよな。俺も東京は同級生がいないからどうしようか迷ったけど、親に言われて参加したような気がするよ。成人式の記憶も、ほとんどなくて短歌にした光景の記憶と、たしかV6の曲だと思うけど会場で「WAになって踊ろう」を歌った記憶くらいだ(笑)
振袖の変わりにデザイナーズブランドの服買ってもらったんだな!凄くいい思い出だな!俺は、その頃はほとんど服とかに興味がなくて、今思うと俺も服とかいいものをもう少し買ったら良かったなあと思うことがよくあるよ。
俺の短歌が参考になると言ってくれて、とても嬉しい!そういえば、幼子がよく出てる気がするな!
山形文学講座でほむほむにサインしてもらった『はじめての短歌』に、小さい子供の言葉を短歌にすることを短歌の作り方のひとつとして薦めていたから、以前より意識してスーパーとか図書館とかで子供の言葉も聞くようになった気がする!子供はまだ社会とのチューニングがあってないから、子供の言葉を短歌にするといい短歌になりやすい、そんな内容のことを書いてたよ!
まことの短歌も、前回掲載された短歌も今回の短歌もとてもユニークな視点だし、凄く面白いと思った!取り消しになる心配とかもあまり気にしなくていいと思う!
また、まことの短歌が読めるのが楽しみだ!それと、腰の調子が悪いとのことでどうかお大事にしてくれ!