念力レストラン(笹公人著)春陽堂書店

明けましておめでとう❗張飛だ❗

突然だが、新年早々に嬉しいことがあった。短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 のvol33【飲み物】に俺の短歌が佳作として掲載されていたんだ。

おっちゃんの喉にかかれば一瞬で讃岐うどんが飲み物となる/石井啄也

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」vol33【飲み物】企画・撮影・編集 田中ましろ

石井啄也は俺のペンネームだ。投稿したのが8カ月前だったから、投稿したこと自体をほとんど忘れてしまっていた。

正月に「そういえば、うたらばに投稿した短歌はどうなったんだろう」と思って、うたらばのホームページをチェックするとお題【飲み物】のWEB版が公開されていたので見てみた。

すると、佳作集の短歌の中に俺の短歌があったんだ。うたらばは、投稿自体止めようと思ってたんだが、掲載してもらえたので今後も投稿しようと思う。

年に2、3回の発行みたいだから新聞歌壇や、短歌くださいに投稿しながらでも無理なく短歌を投稿出来そうだしな。(短歌くださいと同じく毎回お題があって、投稿数に上限はない。ホームページの投稿フォームから投稿できる)

次回のお題は「仕事」(締め切りは4月22日)という事で、またじっくり考えて投稿したい。

特に良い作品は、短歌のイメージに合う写真つきで掲載してくれるみたいだから、次は写真つきで掲載してもらえるように頑張りたい。

うたらばは、カフェ、書店などで配布されていて配布店舗はホームページに掲載されている。(ちなみに、月刊うたらばというのもあって、こっちはwebサイト上と、公式Twitter上に採用作品が公開されるようだ)

今回採用された短歌は、実際に香川県に住んでいる俺がうどん屋でたまに見かける光景なんだ。普通は、噛んで食べると思うがたまにジュースを飲むような勢いで(噛んでるかどうかはわからない)、うどんを食べているおっちゃんを見かける。

くれぐれも、このブログを読んでいるみんなはそんな食べ方を真似しないようにしてくれ。

じゃあ、今日もおすすめの本を紹介するぞ❗

笹公人の短歌、エッセイ、小説を収めたバラエティ作品集

こんな奴におすすめ❗

  • ユーモア溢れる短歌を読みたい奴
  • 想像短歌が好きな奴
  • 短歌だけでなく、エッセイも好きな奴

概要

著者は、人気歌人の笹公人。短歌結社「未来」の選者や、「牧水・短歌甲子園」の審査委員も務めている。

著者の短歌を初めて俺が読んだのは、「短歌タイムカプセル」という短歌のアンソロジーだ。ユーモアに溢れる短歌が多くて、気になっていた。

ただ、著者のどの本を読もうか迷っていたところ読書アプリ「ブクログ」の友達のベルガモットが、この本のレビューを書いていて面白そうだと思ってさっそく読んだ。

結論から、言うと期待に違わずめちゃくちゃ面白い。著者の写真も載っていたが、凄く真面目そうな雰囲気で、短歌との間にいい意味のギャップがある。

この本は、短歌だけでなく、エッセイやパロディ掌篇小説も掲載されていて、最初に「念力レストラン シェフより」という「はじめに」にあたる文章がある。まず、俺はここで心をわしづかみにされた。

そして第1章は短歌が250首掲載されている。いくつか、紹介したい。

もし君がキエーーと奇声あげながらヤシの実割ったとしても 好きだよ。

「念力レストラン」笹公人著(春陽堂書店)

この本の最初の短歌だ。普通は、第1首めは無難というか、野球でいえばコンパクトに振り抜くような短歌が置かれることが多い気がするんだが、いきなりフルスイングの短歌だ。

一見、奇抜な短歌にも思えるが、「君」「キエー」「奇声」で「き」が続いて韻律が心地良く、「好きだよ」の前の余白がこの一首を引き締めている。この余白によって、リズムにメリハリがついて「好きだよ」に重みが出ている。

「OK、グーグル、この部屋には誰がいる?」「アナタト地縛霊ノフタリデス」

「念力レストラン」笹公人著(春陽堂書店)

「OK、グーグル」と話しかけるだけで、天気やニュースなど様々なことを調べられるGoogleのスマートスピーカー。もちろん、部屋に幽霊がいるかどうかも教えてくれる・・・わけない。

そんな事まで、分かるとしたら逆に俺は買いたくない・・・。

人食いザメの腹を捌けばあらわれる水曜スペシャルの青い半袖

「念力レストラン」笹公人著(春陽堂書店)

これは懐かしいなぁ。確か、俺が小学生の頃だったと思うが「水曜スペシャル」という番組があって人食いザメとか、森の中に潜む謎の怪人とかを探検隊が追いかけていた。

この短歌は「人食いザメ物語」という連作の最初の一首だ。連作のネーミングがシュールすぎる。

そして、第2章は短歌の事や、著者が映画に出演した時の事、著者がテクノポップユニットを結成して演奏した時の事などを書いたエッセイが12本収録されている。

一番印象的で、勉強になったのは「短歌は音楽だ」というエッセイだ。

著者は20代前半の一時期、アイドルが歌う曲の作詞の仕事をしていたらしい。そんな時にディレクターからもらったアドバイスについて書いている。次のようなことが書かれている。

それは、歌詞の頭とサビは、なるべく母音のa(ア)音が含まれるア段(あ、か、さ、た、な、は、ま、や、ら、わ)にしたほうがいいというものだった。

(中略)

音声学の研究家・山根章弘氏によると、「ア」の母音を耳にしたとき、われわれは「明朗で開放的」な印象を受けるらしい。

(中略)

藤原俊成は、「歌はただよみあげもし、詠じもしたるに、何となく艶にもあはれにも聞ゆる事のあるべし」(古来風体抄)と述べている。今こそ短歌は、元来尊重されていた音楽性に立ち返るべきだと思う。

「念力レストラン」笹公人著(春陽堂書店)

このエッセイを読むまで、俺は「ア」の母音の持つ効果とか考えた事もなかった。詩は出だしが大事という事は聞いた事があったが、こういう理由があったのか、と納得する事ができた。

このエッセイでは、他にも齋藤茂吉の短歌を「アイウエオ」の五つの母音に分解して鑑賞した作家の井上ひさしの文章が引用されている。

著者はこのような「母音分解読み」は今でも有効だと述べている。俺も、これから短歌を作る時は意味内容だけでなく、音読した時の韻律の美しさにも気を遣っていけるようにしたい。

第3章は、予備校体験記のパロディ掌篇小説だ。とても笑える内容で、笹ワールドが爆発している。

あとがき、では著者が父のように慕っていたという大林宣彦監督のエピソードが心に残った。大林監督の「転校生」という映画についてこう書かれている。

尾道を舞台にした名作の中で、監督は観光絵葉書になるような景色は撮らず、路地裏、坂道、石段、崩れかけた土塀、ひび割れた屋根裏のある風景、そういうものだけを撮っています。

「念力レストラン」笹公人著(春陽堂書店)

俺はこれを読んで、尊敬する詩人、金子みすゞの「大漁」の詩を思いだした。スポットライトの当たる華やかな舞台だけではなく、多くの人が目を向けていないような部分にも目を向けていく。映画や詩、短歌のみならず生きていくうえでも大切なことではないか、と考えさせられた。

「転校生」は上映から40年近くたった今でも、映画を観て尾道を訪れる人が後をたたないそうだ。

まとめ

ユーモアとほんの少しの切なさを感じさせる短歌と、ストイックにより良い短歌を作ろうとする情熱の感じられるエッセイ、二年間にわたる浪人時代を思い出しながら書いたという独特の世界観のパロディ掌篇小説。

この本を読めば、お前も笹ワールドの虜になるに違いねえ。

最後に

皆は、箱根駅伝をいつも見てるだろうか。俺は高校時代に、駅伝を走っていたこともあって、箱根駅伝を毎年見ている。学生たちの、必死の走りを見てると元気をもらえる。

今日は、そんな箱根駅伝で起きたある事件に関するクイズを出したい。1925年に行われた第6回大会の3区で人力車を引く仕事をしている人力車夫が学生の替え玉として走ったんだ。替え玉選手は4人を抜き、チームを2位まで押し上げたが、ある理由で替え玉がばれてしまう。その理由は次の3つのうち、どれか考えてもらいたい。

①一人抜くたび「アラヨーッ」と人力車夫特有の掛け声をだしたため

②観客の中に普段人力車に乗っているお客さんがいて、告げ口されたため

③走るフォームが両腕を前に出して走る、人力車を引く時のフォームだったため

正解は・・・、

 

 

 

①の、一人抜くたび「アラヨーッ」と人力車夫特有の掛け声をだしたため、だ。

よほど、嬉しかったんだろうな・・・。

じゃあな。

(次回は、1月29日(日)に更新予定)

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