財布を拾いました。

お疲れ様です。さぬきです。

先日、仕事からの帰り道で財布を拾いました。

夜の11時くらいに国道を歩いて帰っていると、歩道の真ん中に何やら黒いモノが落ちてまして、

拾ってみると財布だったんです。

拾った瞬間は正直言いますと、

 

 

「やったぜ」

 

 

と心の中で握りコブシを高々と突き上げたんですが、次の瞬間、ある出来事をふと思い出したんです。

 

僕は高校卒業後の数年間、フリーターをやってまして、

 

そのころ近所のコンビニでアルバイトをしていました。

 

いつも自転車で通っていたんですが、

 

ある日、給料袋をお尻のポケットに入れたまま帰っていたら知らない間に落としてしまったんです。

 

ちょうど家に着いたとき、ポケットに入れたはずの給料袋がないことに気づきまして、

 

慌てて帰ってきた道を自転車で引き返しました。

 

バイト先のコンビニまでは自転車で20分くらいの距離だったんですが、このとき僕が樹立した14分台という前人未到の世界記録はこれから先も破られることはないだろうと思います。

 

結果から言いますと、給料袋は見つかりました。

 

でもそれは世界記録更新中に見つけたのではなくて、警察に届けられていたんです。

 

世界記録更新後、僕は精神的にも肉体的にもダメージを負い、クラクラする頭とフラフラする体を支えながらなんとか帰宅して「今から僕死にます」レベルのトーンで警察に電話して給料を落としたことを伝えました。

 

「この1ヶ月間バイトに費やした時間は一体なんだったのか、これから先の1ヶ月間の生活はどうしよう」

 

日課だった生殖行為のリハーサルもまったくヤル気が起こらず、途方にくれてただボーッと1日を過ごしました。

 

翌日、警察からの電話を受けたとき僕はガチで泣きました。

 

受話器を額に当てて「ありがとうございます、ありがとうございます」と届けてくれた方への感謝の思いが枯れることを知らない湧き水のごとくあふれ出て何度も何度も頭を下げては泣きながらつぶやきました。

 

1992年バルセロナ五輪の競泳女子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得した岩崎恭子さんは競技直後の記者団の前で、

 

「今まで生きてきた中で、一番幸せです」

 

と涙を流しましたが、

 

競輪男子アルバイト通勤路ママチャリの部で金メダルを獲得した僕は警察からの電話のあと受話器の前で、

 

まったく同じ気持ちでいました。

 

警察署へ落とした給料を受け取りに行くと、届けてくれた方の連絡先を教えてくれました。

 

給料袋の中身はまったく手つかずそのままの状態でした。

 

僕は感動しました。身震いするほど感動しました。

 

受取人の身分証明の書類を書きながらまた泣きそうになりました。

 

このとめどない感謝の念をどうしても届けてくれた方に直接伝えたいと思い、電話で連絡を取ったあと自宅までお邪魔して本当に少ないですが謝礼と菓子折りをお渡ししてお礼を伝えさせていただきました。

 

僕の給料袋を拾って中身には一切手をつけずに警察に届けてくれた方は70歳になる近所のおじいさんでした。

 

さわやかな笑顔、優しくも力強い眼差し、堂々たるそのたたずまい。

 

餓鬼畜生のはびこるこの地獄のような現代社会において、菩薩とはまさにこのおじいさんのことを言うのだなと、

 

僕も私利私欲をいっさい捨てていつか必ずこのおじいさんのような境地に立ちたいと、

 

今、目の前にいるおじいさんが僕の人生において一寸の曇りもない生ける指標のように思えました。

 

 

 

 

心を亡くすと書いて忙しいと読みます。

 

 

 

 

忙しさに追われてただ時間を浪費する日々を送る中で、僕はあのときの感動と感謝の気持ちを完全に忘れていました。

 

何が「やったぜ」だと。

 

俺は人間として一番大事なものを亡くすところだったと。

 

僕はあのときのおじいさんの顔を思い出すことでやっと我に帰り、今度は自分の番だと、拾った財布をすぐに警察署へと届けに行きました。

 

もう夜中の0時前。

 

警察署に入ると中にいた警察官がこんな時間に何事かというような少し強張った表情で話しかけてきましたが、落ちていた財布を届けにきたことを伝えると表情を和らげて「書類を作りますんでこちらへどうぞ」と僕をロビーの奥へと案内しました。

 

書類作成にはけっこう時間がかかりました。

 

まず拾得者である僕の住所や連絡先、拾った場所と時間、どういう状態で見つけたのか拾ったときのことを細かく聞かれました。

 

次に財布の中に入っているものを全部デスクの上に出して、拾った僕と警察官2人の3人で1つ1つ確認していきます。

 

財布の中には現金が5000円くらい(実際は1円単位で金額を確認しました)、レンタルビデオ屋の会員証、銀行のキャッシュカード、学生証が入っていました。

 

財布の持ち主は隣県の高知県出身で近所の大学に通う学生さんでした。

 

全ての確認が終わったあと、こんなことを聞かれました。

 

 

「拾得者であるさぬきさんには拾った現金の5~20%の謝礼金を受け取る権利があります。持ち主にさぬきさんの連絡先を伝えますか?」

 

 

僕はこう即答しました。

 

 

「いいえ、連絡先は伝えなくてけっこうです。謝礼も要りません」

 

 

僕はそんなつもりで届けにきたわけじゃない。

 

あのときのおじいさんのように人として真っ当に生きていきたいだけ。

 

そして、もしこの学生さんがこの先誰かの落とした財布を拾うときがあったとしたら、そのときは僕のことを思い出して落とし主の気持ちを思いやり警察に届けて欲しい、そういう優しい連鎖を生んでいきたい。

 

ただただそれだけの想いでいました。

 

 

 

 

でも、このとき僕、ふと気付いちゃったんです。

 

 

 

 

そういや、僕が給料袋落としたときって拾ったおじいさんの連絡先教えてくれたよな、って。

 

 

あのおじいさんも給料袋を届けたときに僕と同じように謝礼の説明とか聞いたはずだよな、って。

 

 

あれ・・・?

 

 

おじいさんは謝礼を受け取る権利があると知ったうえで、警察官に自分の連絡先を僕に伝えてもいいって言ったってことでしょ・・・?

 

 

ん?

 

 

いやいや、全然いいんですけど、

 

 

届けてくれたのは今でも本当に感謝してるし、謝礼も僕の心からお渡ししたものだから何も問題ないんですけど・・・、

 

 

なんかちょっと生ける指標が、

 

 

本当にほんのちょっとだけなんですけど、

 

 

 

曇っちゃいました。

いや、ほんと全然いいんですけど。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

HN:さぬき うどん県在住。11月6日生まれ。AB型。さそり座。辛党のビール派。三十路のおっさんです。 約4年前から「さぬきうどん」「さぬきのぴっぴ」のハンドルネームで活動してきました。 趣味は音楽、将棋、オカルト、お笑い、2ちゃんねる。 1人でいる時間が好きです。1人でいる時間が好きな人も好きです。1人でいる時間が好きな人が好きな人も好きです。→詳細はこちら