もう一度「青春」しませんか?

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先日、高校時代の友人からLINEで、ある1枚の写真が送られてきました。

どこかの川辺で撮った写真。広い川に赤い橋がかかっていて、その向こうにはビルが立ち並んでいます。一見、なんでもないような風景写真。

「これはどこだろう?」

その風景に見覚えはありません。

僕たちは二人とも香川県出身で高校の同級生。しかも同じ演劇部でした。その友人は高校卒業後、県外の大学に進学。広島県にある会社に就職していて、今でもたまに連絡をとったり、彼が帰省したときに高校時代の仲間で集まって飲みに行ったりしていました。

「広島かどこかの写真かな・・・」

写真の着信時間はつい数秒前。この写真についての説明なりなんなりのコメントがじき届くだろうと思った僕は、返信せずにスマートフォンをいったん置いて仕事の雑用を片付けていました。

しかし、いくら待ってみても友人からのコメントは届きません。LINEのトーク画面は川が写った画像で止まっています。

「これはどういうことだろう・・・」

試金石

僕たちのいた演劇部にはとにかく変なヤツがたくさんいました。というか、変なヤツしかいませんでした。これは演劇部の特性なんでしょうか。

クラスからはみ出したヤツや馴染めないヤツ、危険物扱いされているヤツ、とにかく目立ちたいヤツ、全力でオタクなヤツ・・・、そんな学校の変人たちを一手に引き受けていたのが演劇部だったといっても過言ではありません。そしてもちろん僕も例外ではありません。

「変人集団」無理矢理によく言えば「個性的集団」

面白かったですよ。僕は演劇部の空気が大好きでした。そして、そんな個性的なヤツらの中でもひときわ異彩を放っていたのが、今回LINEで写真を送ってきたA君です。

演劇部お笑い担当。その笑いのセンスに僕は一目置いていました。独特の世界観、間合いから繰り出される言葉やジェスチャーに何度も驚かされ笑い転げました。

その一方で、僕は彼を密かにライバル視していました。僕には「独自の世界観なら俺だってそれなりに培ってきたものがある」という思春期特有の訳のわからない自負がありました。

貴重な青春時代に演劇部で切磋琢磨しながら変態度を競いあったA君。

そんなA君からノーコメントで送られてきた1枚の写真。

もしかしてこの写真は僕のことを試す試金石なのではないか?そんな気がしてなりませんでした。

「最近お前の笑いは衰えているんじゃないか?あの頃を思い出せ」

「さぁ、本気出してみろよ。この写真に面白いコメントを返してみろ」

「ボケてもいい、気の利いたツッコミがあるならツッコんでもいい。さぁ俺の写真から言葉を拾い上げてみろ」

A君のそんな言葉がその風景写真から今にも聞こえてきそうでした。

正解なんてどこにもない

これがA君からノーコメントで送られてきた写真です。マジで意図がわかりませんでした。普通なら「だから何?」で終わらせることもできるような何の変哲もない風景写真です。

しかし、

きっとこの写真には何かが隠されているに違いない、僕は最初そう考えました。あのA君がわざわざ撮影して僕に送ってきた写真です。どこかにボケの要素があるはず、ツッコミ待ちのはず。あるいは僕のボケをせかす前フリなのかもしれない。いずれにせよ、僕はこの写真から面白い言葉をひねり出さないといけないんです。A君を笑わせる言葉を返さないといけないわけです。

A君に負けるわけにはいかない。

唸りました。僕は1人でスマホの画面を睨み付けるように凝視しながら唸りました。

「これはどこ?」「めっちゃ天気ええな!」「散歩中かな?」

そんなありきたりなコメントでA君が満足するはずがありません。隠されたボケを、メッセージを、そんな片手間コメントでスルーするわけにはいきません。考えます。全力で考えます。前頭葉と側頭葉が今にもちぎれそうです。

「おお、六本木ヒルズって広島にもあったんや」

ダメや。こんなんじゃダメ。ダメ、ゼッタイ。考えろ、俺。

「そんなとこで何しとるん!?まだ早いって!そこ三途の川やろ!?」「え、これってもしかして念写に成功した1枚?」「むかしむかし、おじいさんとおばあさんはここで桃を拾いましたってか!?」

絶望に近い感情がわき起こります。これが俺のリアル。これ以上のレベルのコメントが出てこない・・・。もはやこれまでか無念、と思いながら結局、

「連続幼女誘拐事件の犯人に幼女と間違われて誘拐されかけたけど、よく見たら三十路のオッサンだったことがバレて鈍器のようなもので頭部を殴られた瞬間、手に持っていたスマホで現場がどこかわかるように写真を撮って、LINE起動して、トーク画面を開いて、アップして俺に送ったっていうダイイングメッセージ的な設定かな?」

と送ろうとしましたが、送る直前に変に気を遣ってしまって、ダイイングメッセージ云々はA君が気を悪くするといけないと思いやめました。

もう僕に打つ手はありません。

やはりA君には勝てない

「隠されたメッセージを必死で探したけどわからんかった ベタでごめん、これはどこ?」

敗北宣言です。情けない。力及ばず、A君の期待に応えることが出来なかった自分を恥じました。

俺もやっぱこんなもんか、高校のころはもう少しマシやったような気がするけどなぁとため息をつきながら、申し訳ない気持ちでトーク画面をただ見つめてA君の返答を待ちました。

少しすると僕のコメントに既読が付きました。なんとも言えない緊張感が漂います。

それから間もなくLINEの乾いた着信音が1人うなだれている僕の部屋に響き渡りました。

コメントを見るのが少し恐い。僕は意を決してトーク画面を覗き込みました。

 

 

「広島です。メッセージはない。」

 

 

・・・。

 

 

 

いやいや、そんなはずはない。

僕は自分の目を疑いました。

えっ、特に意味ないの!?ええっ、じゃあマジで何やったん、あの写真!?

やはりA君の言動は読めません。僕の何歩も先を歩いているような気がしました。

いや、でもまさか・・・、これって・・・

僕はハッとしました。

そうか!これもきっと僕を試しているに違いない。A君は今頃ニヤニヤしながら僕からのおもしろリアクションコメントを待っているに違いない!

A君が返してきた短いコメントからは、今にもこんな声が聞こえてきそうでした。

「最近お前の笑いは衰えているんじゃないか?あの頃を思い出せ」

「さぁ、本気出してみろよ。このコメントに面白いリアクションを返してみろ」

「ボケてもいい、気の利いたツッコミがあるなら・・・

以下省略。

 

※写真、LINEのトーク内容はすべてA君の了承を得て掲載しています。

 

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11 件のコメント

      • まあ実際合ってるかわかんないけどね!
        多分だけど某大型ショッピングセンター近くの川かな?
        大きい店だから買い物の帰りとか散歩とかで行ったのかな?と予想

        近所じゃないけど仕事帰りによく間違えてその線の電車に乗って後悔するからね!

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    HN:さぬき うどん県在住。11月6日生まれ。AB型。さそり座。辛党のビール派。三十路のおっさんです。 約4年前から「さぬきうどん」「さぬきのぴっぴ」のハンドルネームで活動してきました。 趣味は音楽、将棋、オカルト、お笑い、2ちゃんねる。 1人でいる時間が好きです。1人でいる時間が好きな人も好きです。1人でいる時間が好きな人が好きな人も好きです。→詳細はこちら