「お客様、開いてますよ」

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いつもお世話になっております、さぬきでございます。

私はふだん飲食料品を取り扱う小売店で働いております。

主に接客をやらせていただいています。

こんな空気の読めない私が僭越ながらと申しますか、

20代の頃の愛読書が「デラべっぴん」だったような私おこがましい限りだとは思いますが、

レジなんかを打たせていただいているわけでございます。

お客様と接するうえで大切なのは真心です。

真心の接客とはどういうことか?

お客様おひとりおひとりに合わせて臨機応変に対応させていただくということでございます。

しかしながら先ほども申し上げましたとおり、私はビックリするほど空気が読めません。

お客様おひとりおひとりの心情を読みとって対応するなどというのは明らかに無理ゲーでございます。

そこで、こんな私のような人間でも必要最低限のサービスをお客様へ提供できるように当店にも接客マニュアルというものがございます。

接客マニュアルには、あいさつの仕方から始まり苦情をいただいたときの返答、その後の対応までこと細かく記載されております。

私はマニュアルを丸暗記するほど熟読いたしました。

けっして褒められたことではありませんが、

「空気が読めないならマニュアルを読めばいいじゃない?」と考え熟読いたしました。

ご迷惑をおかけしたこともありました。私の接客をもどかしく感じるお客様も多くいらっしゃったことと思います。

それにも関わらずこんな私がこれまで接客業を続けてこられたのも厳しくも温かく支え続けてくださったお客様のおかげでございます。

 

 

私は接客業に携わってもう10年以上になります。

 

 

毎日店頭に立っておりますと、本当にいろいろなお客様がいらっしゃいます。

去年の今頃だったでしょうか。

お昼時にズボンのファスナー、いわゆる「社会の窓」を全開にした50代サラリーマン風のお客様が来店されました。

聞いて驚かれるかたもいるかもしれませんが、「社会の窓全開のお客様」はけっこういらっしゃいます。

けっして悪く言うつもりはありません。

私も相当うっかり八兵衛なところがございますので逆に親近感を抱くほどですし、何よりも自由でございます。

社会の窓を閉めてご来店されようが、開けてご来店されようが、それはお客様の自由でございます。

問題はお客様にあるのではなく、社会の窓を開けてご来店されたお客様に合わせた真心の接客が私にできるかどうかにあるのでございます。

これは接客マニュアルにも書かれていないことです。私のとりつくろいようのない真心が試されます。

私はお客様の立場に立って考えてみました。

社会の窓が全開になっていることを私がお客様にお伝えした場合、お客様はどう思われるだろうか。

もしかしたら気分を害されるかもしれない。

ずいぶん年下の、何の取り柄もない私のようなつまらない人間に、20代の頃の愛読書が「デラべっぴん」だった私のような人間に、

社会の窓が開いていることを指摘されてしまったら、お客様は気分を害されるかもしれない。

でもだからと言って、見て見ぬふりをすることが本当にお客様のためになるのだろうか。

お客様は一見、商社マンといった感じ。

お店を出たあと取引先に行くにせよ、会社に戻るにせよ、どっちにしたって社会の窓が開いたままのこの状況が、お客様にとってプラスになるとは到底思えませんでした。

私は声のトーンを落としてお客様にお伝えしました。

「お客様、開いてますよ」

私はこのとき「しまった!」と思いました。

私は悩んだ末にお客様のためと思いお伝えしました。でも、

私の「開いてますよ」がいつかテレビで見たことのある芸人さんの「安心してください!はいてますよ!」の「はいてますよ」と同じイントネーションになっていることに気づいたんです。

なんかふざけてる感じになってしまったんです。

慌てて「失礼しました」と謝ろうとした瞬間、お客様から返ってきた言葉に私は心底驚きました。

 

 

「えっ・・・いや、開いてなんかないですよ」

 

 

「やってしまった、見間違えたか!」と思った私は急いでもう一度お客様の股間に視線を向けました。

開いていました。

社会の窓は間違いなく開いていました。

私がお客様の顔に視線を戻すとお客様は何も言わずに涼しい表情のまま顔を背けてしまいました。

お客様があのときどう思われて「開いてない」と言ったのか、それはお客様にしかわかりませんが、

そのお客様に対しては、社会の窓が開いていることをお伝えしたのは間違いだったんだなということはわかりました。

あの日以来、真心の接客とはいったい何なのかを社会の窓が開いているお客様を見かけるたびに深く考えるようになりました。

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HN:さぬき うどん県在住。11月6日生まれ。AB型。さそり座。辛党のビール派。三十路のおっさんです。 約4年前から「さぬきうどん」「さぬきのぴっぴ」のハンドルネームで活動してきました。 趣味は音楽、将棋、オカルト、お笑い、2ちゃんねる。 1人でいる時間が好きです。1人でいる時間が好きな人も好きです。1人でいる時間が好きな人が好きな人も好きです。→詳細はこちら